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猫アニメ

猫の問題行動に関する相談事例


No.72:外飼いの雄猫がご近所さんを攻撃する。


★★相談内容★★

愛知県に住む◯◯と言います。猫は、推定7歳の雑種のオスです。去勢手術は1歳になる前にしてあります。近所の猫とけんかをするので、その家の飼い主がうちの猫が近づかないように、水をかけたり、ほうきでおいかけたり、石を投げたりしたようです。

外飼いの我が家の猫が悪いのですが、水をかけられた二日後ぐらいに、その家の車の下にいて、飼い主が通った時、襲い掛かってけがをさせてしまいました。それからは、なるべく外に出さないようにしています。しかし、それまで外で自由にさせていたので、今後が心配です。

獣医さんに相談しましたが、家の中で飼うしか方法はないと言われました。ネットでジルケーンという薬があるということも知りましたが、何か良い方法はないでしょうか。



★★助言内容★★

ご近所さんに対する猫さんの攻撃行動は、基本的にはその方の攻撃から自分の身を守るための、防御性攻撃行動という本能行動だと思われます。なお、そういった本能行動は学習によらず特定の刺激によって引き起こされるものなので、今回のケースでも同様に猫さんの攻撃行動のスイッチをオンにする刺激が存在するはずです。

その場合、猫さんにとってご近所さんは確かに脅威の対象ではありますが、その姿を見かけたり挑発されたりしたからといって即座に攻撃したりはしていないはずです。なぜならば、脅威に晒された猫に見られる本能行動で先ず最初に起きるのは攻撃ではなく逃走だからです。しかし、追いつめられたりしてその機会を逸してしまった場合は、一転して脅威を与える相手に対し攻撃行動に出ます。すなわちそれでわかるようにこの逃げ場がないという状況が、攻撃行動をスイッチオンさせる刺激になるというわけです。

したがって今回猫さんがご近所さんを攻撃したのも、脅威の対象であるその相手に追いつめられたと感じたからではないでしょうか。おそらくは車の下にいたためその接近を知らないまま、気づいた時には相手は間近に迫っていて退路が断たれてしまったのかも知れませんね。

ただ、今後もこのようなことが起こってその都度猫さんがご近所さんを攻撃してしまうと、猫さんの中では攻撃すれば相手を怯ませて支配できるといったことが学習されてしまい、それによって当初は学習によらない防御的な本能行動であったはずの攻撃行動が、一転して学習により優位性攻撃行動のような異なるタイプの攻撃行動に変容してしまう恐れがあります。

そうなった場合には、ご近所さんの顔を見ただけで猫さんの方から攻撃を仕掛けるようなことが起こりかねず、事態が更にこじれてしまうかも知れません。それを避けるためには、猫さんには気の毒ですが完全室内飼いに移行せざるを得ないでしょうね。

なお、その際室内に閉じ込められることで猫さんに強いストレスが生じることは否めず、外へ出たいと大鳴きする過剰発声などの問題行動が出現することを想定し、予めその対策を考えておく必要があります。例えばその行動ニーズを満たしてやるため、毎日一定時間リードをつけて外に連れ出してやるといったことも効果的です。

それとは別に、ストレスによる脳神経系の過剰な緊張を解いてやるためにしばらくの間、抗不安薬などの向精神薬を服用させるのもいいでしょう。因みにジルケーンは薬ではなくサプリメントですが、気持ちを穏やかにさせる効果のある成分が含まれており、効果に個体差はありますが副作用を心配することなく食品のように常用できるため、それを併用するのもいいでしょう。



★★相談内容★★

ご丁寧なお返事ありがとうございました。彼女がケガをされてから、気持ちが沈み、何も手につかない状況でした。しかし、もともと仲たがいしていた関係ではなかったのが幸いしました。昨日、携帯の電話番号を教え、何かあったら、連絡してほしい旨を伝えました。その夕方、その方から連絡があり、お互いに猫が外に出ている時間を教えあい、接触を避けようということになりました。今のところ、それでうまくいっています。

ジルケーンについては、獣医さんと相談し、試してみることにしました。先生からのメールも安心材料になりました。本当にありがとうございました。