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猫アニメ

猫の問題行動に関する相談事例


No.27:病院である時を境にして突然凶暴化。


★★相談内容★★

猫の問題行動についてネットで調べていて、こちらにたどりつきました。

去勢済みオス14歳雑種です。上の犬歯が下唇に当たる所が化膿してしまったことで診察を受けた際、6月に8.7キロあった体重が7.3キロに減っていたことが分かりました。そこで4日(土)、血液検査を受けることにしました。処置室に猫と獣医師、看護師だけで入っていったところ猫が暴れて手がつけられないと呼ばれたため、私も処置室に入りました。今まで見たことのないような怒り具合で、飼い主である私が手を出したら噛みつかれて流血してしまいました。結局、怒りは収まらず、何もできないまま帰宅。帰宅直後から、いつもの猫に戻っていました。

今まで毎年1回、血液検査をしており、採血を嫌がったことは一度もありませんでした。下唇の怪我は、腫れが弾けて血と膿が出て、一時は下顎半分が腫れ上がっていましたが、今はかなり引いた状態です。まだ投薬を続けています。

本日5日(日)、再度病院に行きました。下唇の怪我の件で、抗生物質を背中に注射しました。これはキャリーバッグと洗濯ネットに入った状態でプスっと刺しただけなので問題ありませんでしたが、バッグから出そうとするとまた獣医師を攻撃し、目つきが怒りモードになっていたので断念しました。やはり帰宅すると普通に戻っていました。

体重激減については、尿検査で糖が出なかったので獣医師は甲状腺の病気を心配して、血液検査が必要だと言っています。明日の朝、食事抜きで病院につれていく予定ですが 獣医師からの説明によると、足に筋肉注射の鎮静剤を打って採血することになるそうです。それは今日の注射のように背中にプスっと打つのとはわけが違うとのことで、そうなると結局困難なのではないかと思うのです…。

今回は下唇のけがの痛みと、病院で怖い思いがリンクしてここまで凶暴化してしまったのでしょうか?私も噛まれた怪我の恐怖があり、保定する自信がありません。とにかく獣医師に体を触らせない猫には経口薬の鎮静剤など何かいい方法はないのでしょうか。このままずっと、病院で触らせない猫のままではこれから老化で病院にかかることも増えるだろうに治療もできませんのでどうにかすることはできないものでしょうか…。もともと体をあまり触られるのが好きではなく、ブラッシングをすると怒りますし、シャンプーするのは平気でも、タオルで体を拭かれるのを嫌がります。

このまま病院に無理やり連れていっては普段から凶暴化が進むのでは私を攻撃の対象にするようになるのではということも心配です。長々とすみません。何かアドバイスがいただければ嬉しいです。



★★助言内容★★

ご相談の猫ちゃんですが患部が自壊して排膿するまでの間、下顎半分が腫れあがるほどの膿瘍が形成されていたとすると、口を開けるのは言うに及ばず顔を動かしただけでも苦痛を感じるほどの強い痛みがあったことは容易に想像できます。体重の減少は十分な食餌をとれていなかった可能性はないでしょうか。

そういった疼痛による極度のストレス状態におかれている猫の場合、保定など体を抑えつけたりしたことで殊更痛みに輪をかけるようなことになれば、そんな目にあわせた相手に対し自己防御的な攻撃行動を示すのはいたって普通でごく正常な反応です。

私たち人間は、痛みの原因はもとより病院に行く意味やそこで痛い思いをしたとしてもそれは治療のためと認識していますが、猫たちにそういった認識はなく単に拘束され危害を加えられたと思うだけでしょう。となれば、我が身を守ろうとして目の前の相手を誰彼なく攻撃するのは当然のことです。

問題はそれよりも、その際に診察台の上などでされたことと痛い思いをしたこととが強く結びついてしまうことで、痛みがなくなってからも同じことをされただけで攻撃行動のスイッチが入るようになり、今回のケースのような病院泣かせの猫になってしまうことです。だからと言って猫に罪はありません。

ただしそれを結びつけるのはあくまでも学習なので、個体差である学習能力の違いによってそうなる猫、ならない猫、なってもすぐ忘れてしまう猫など様々ですが、一度それを学習してしまうとホームレンジ外での問題であるためその行動修正は極めて困難なものになります。

もっともこの攻撃行動は、病院に連れていかれ診察台の上などで抑えつけられるといった特定の状況下での痛みや恐怖に対して条件づけられた情動反応ですので、自宅で同じような目に遭わせないかぎり病院で起きたような事態が自宅で起きることはないと考えていいでしょう。

とは言えおたくの猫ちゃんの場合、元々体を触られることが嫌いなうえに今回のことで触られることと痛みとを関連づけ易くなっていますので、要らぬ問題行動を生じさせないためには体に何らかの痛みを抱えている時の扱いには細心の注意が必要です。

最後の問題は猫ちゃんを病院に連れていかざるを得ない時ですが、麻酔前投与に用いられる向精神薬の多くには鎮静作用がありますので事前にそういった薬剤を経口投与しておくことは有用です。ただ注射薬のような即効性はありませんので効果が現れるまで数時間かかり、薬の種類や猫によっては用量に対し効果が安定しない場合があります。使用についてはかかりつけの病院にご相談されてみてはいかがでしょうか。