<<< Q & A・No.179 >>>

 

 

 

 

はじめまして。

私は1年半前から2匹の猫♂♀を飼っている27歳の女性です。

先週から10ヶ月の猫♀を引き取りました。

全てシェルターからです。

新しい子は脚がふらついて、真っ直ぐ歩けず転んでしまいますし

シェルターでも両目が腫れて、鼻炎も酷く

調子が良くなかったので

何か病気があるだとうとは思っていました。

病院で調べたところ

FIPのウィルス数値が200でした。

白血病、エイズは大丈夫でした。

先住猫も一時、数値が高かったことがありましたが下がったので

また1ヶ月後くらいに検査しようと思います。

しかし

もうFIP(ドライ)の異常行動が出てるかもしれないと思い

ご相談させて頂きました。

歩行困難、感覚・排泄麻痺、麻痺などがあるといいますが

思い当たる所があります。

先ほどお話したように

歩いても後脚がグニャグニャしてて

元気に走るのですが、転びます。

排泄はトイレでもしますが

違うところでもしてしまいます。

食欲がありすぎて、ゴハンをあげているのですが

トイレの砂を食べたり

今日は自分の便を食べてしまっていました。

かなりショックでした。

勿論、体に良くないですよね?

常にドライフードを置いておくと、それは避けられるかもしれませんが、

オナカいっぱいになる感じがなく

どんどん食べてしまいそうです。

また、寝ているときに急に手足がビクビクと

痙攣しているときがあります。

これはもうFIPが発症しているということなのでしょうか?

フラフラ歩くのは

クリプトコッカス症や中耳炎の可能性もありますか?

左耳を触ると、手を耳に持っていって嫌がります。

首と腕の付け根2箇所に脱毛があります。

エリザベスカラーを取ると

腕の脱毛の部分を自分でむしっていました。

脱毛部分は痒がっていないようです。

どの病気の場合も

他の2匹に移らないかと心配です。

今はケージを毛布で覆って、

食器・トイレは別にしていますが

たまに出たがるので、歩かせています。

これでは隔離ではないですよね・・。

実際、夜になると

先住猫もたまにクシャミをし始めてしまいました・・。

クリプトコッカス症と腹膜炎の両方に

なってしまっている場合もありますか?

アドバイス宜しくお願いします

 

 

  

   

 

 

 

 

○○○様

 たしかに非滲出型(ドライタイプ)のFIPにおいては、中枢神経病変による麻痺や運動失調、感覚過敏などの症状がみられることはあります。加えて、中枢(脳幹)性前庭症状である、眼球振盪(眼球が左右や上下あるいは回転するように激しく動く)、斜頸、頭の旋回、転倒といった症状を伴う場合もあります。

 ただ、それらの症状が現れてくるような段階では、滲出型(ウエットタイプ)のFIPと同様に、すでに慢性的な発熱を伴う一般的な体調や食欲の進行性の低下などが生じているのが普通であり、運動失調はあるにせよ、食欲も旺盛で元気に走り回っているお宅の猫ちゃんの場合は、少し違うような気がします。

 しかも、非滲出型のFIPは、不完全ながらもそれなりに強い免疫力を有している猫におけるFIPウイルス感染の典型例であり、感染したウイルスが免疫細胞によって抑え込まれた結果生ずるものなので、大概は一過性で不明瞭な滲出型のFIPが数週間から数カ月にわたって続き、その後に非滲出型のFIPへ移行するケースがほとんどです。すなわち、非滲出型のFIPの症状が、いきなり現れることはまず考えにくいということです。

 なお、現在のFIPの抗体価(×200)については、少なくとも2週間程経って4倍以上の値になっていなければ、FIPを発症しているとはいえません。逆に値が下がっているようであれば、過去に感染していたとしても現在はウイルスが排除されつつあるので、まず発症の心配はありません。また、FIPウイルスの仲間で、病原性の極めて弱いネコ腸コロナウイルスに過去に感染していても、交差反応によってFIPの抗体価は陽性に出てしまいます。というか、この検査ははじめからコロナウイルス抗体を検出するためのものなので、同じコロナウイルスに属する腸コロナウイルスとFIPウイルスではどちらに対する抗体なのかその区別はつきません。

 クリプトコッカス症についても、中枢神経系が冒されれば上述した非滲出型のFIPと同様の症状が現れることはあります。ただ、症状が一致するからといって早合点しないでいただきたいのは、クリプトコッカスのような酵母の仲間は、自然界ではどこにでもごく普通に存在しており、生体がなにかにつけ暴露する機会の多いカビすなわち腐生菌の一種であり、それが病原体となる確率は極めて低いからです。

 すなわち、普通に免疫力が備わっている個体であれば、まずこの菌に冒される心配はありません。しかし、エイズウイルスに感染するなどして、免疫力が破綻しているような場合は、一転してクリプトコッカスの感染は生体にとって脅威となるわけで、鼻腔などの局所感染がたちまち全身性の感染に拡大し、骨まで冒されます。そのような個体は、普段から細菌やウイルスに対する抵抗力が殆どないため、始終日和見感染を繰り返すなど感染罹患傾向が顕著ですが、お宅の猫ちゃんは、エイズ、白血病とも陰性ということですし、それはないのでは。

 したがって、現在みられる症状はどちらかといえば、子猫の頃の全身性の細菌感染症などが原因での内耳炎(重度の中耳炎から波及する場合もあります)による後遺症か、さもなくば先天性の末梢(内耳)性前庭障害の可能性が高いように思います。ただ、左耳に触られるのを嫌がるということなので、現在も慢性化した中耳炎があるのかもしれません。なお、異常な食欲は食欲中枢の障害が示唆され、食物とその他のものを認識できていないということになると、痴呆の可能性もあります。その場合は、過去にそれらの障害をもたらした非滲出型のFIPの発症があった可能性も完全には否定出来ません。

 

 

   

 

 

 

 

先日、猫の件で質問メールを送った○○○です。丁寧にお答え頂き、ありがとうございました。

1カ月経ってFIPの検査2回目をして、今日、結果を聞いたところ数値は200で変わっていませんでした。

また脚のレントゲンを取ったのですが、骨に異常はありませんでした。脚は悪いのですが、相変わらず走ったりするのでやはり転んでしまいます。それでなのか、脚を怪我していて腫れていました。

かといって、鼻炎も治まっきて他の2匹のクシャミもなくなったので、ケージに入れてばかりだと、出たがるため今は基本的には部屋に出しています。

FIPだと、他の2匹に移ってしまうのでトイレや食器を分けていたのですが、FIPの数値が下がって(上がる)はっきりするまではこのままの方がよいのでしょうか。

食欲も相変わらずあります。たまに食べ終わっても、空のお皿に戻って・・を繰り返しています。最近は、便は食べていないようですが、先日、私の留守中に他の猫の吐物を食べていた形跡がありかなりショックでした。

寝ているときの痙攣もあって、(食後すぐではありません)この前は特に酷い痙攣で、よだれを垂らしていたので心配です。痙攣のとき、たまに失禁もしています。

脳のダメージを受けている可能性は強いと思うのですが、脳の検査でも麻酔を使うと聞いて、迷っています。もし脳に腫瘍など見つかっても、猫の頭を開いての手術も、あまり前例がないとも聞きます。

痙攣が収まって、特に伝染病でないなら元気ではあるので、無理に手術はなどはせずこのままで・・とも考えています。

本人はしっぽを立てて、楽しそうに走っているのでケージの中にずっといさせるのは、どうかと思ってできたらケージをなくしたいです。脚が治らず、転んでも怪我の負担が少なくなるようにカーペットを敷くなど、環境を整えたいと思います。

とにかく一度、先生に診て頂ければと思っています。HPからまた連絡いたします。

アリガトウございました。

 

 

 

  

 

 

 

 

○○○様

 今回の血液検査の結果と現在の猫ちゃんの状態からみるかぎり、FIPを発症している可能性はまずないと思います。ただし、抗体価は極めて低いとはいえ抗体が陽性であることは間違いありませんので、過去にコロナウイルスへの感染があったことは確かです。しかも、抗体が完全に陰性(<100)になったわけではないので、少量のウイルスがまだ体内に残っている可能性がなきにしもあらずということで、同居猫への感染のリスクがゼロになったわけではありません。

 とはいえ、心配しだしたらきりはありません。ちなみに日本の猫の場合、その約50%がコロナウイルス抗体を保有(過去にウイルスに接触したことがある)していると思われますが、大半は下痢を起こさせる程度の病原性しかもたない腸コロナウイルスへの感染です。お宅の猫ちゃんの場合もそれかもしれませんし、それであれば感染してもどうってこともありません。最悪それが突然変異により、体内で病原性の極めて強いFIPウイルスに変異したとしても、そこからFIPを発症する確率は全体の10%あるかないかです。しかも、免疫力の充分そなわった猫であれば、そのリスクはさらに低くなります。普段から過保護、過干渉を避けて精神的自立を促し、ストレスに強い猫にするよう心掛けることですね。病気になることばかりを心配するよりも、病気にならないようにするにはどうしたらいいか、常にポジティブな思考をすることが大切です。

 なお、寝ている時の痙攣については、てんかん発作の可能性が高いように思われます。その原因としては年齢から考えると腫瘍などは考えにくく、過去におけるFIP発症による後遺症などもないとすれば、特発性てんかんが疑われます。この場合は、発作の最中であれば脳波に異常がみられるものの、それ以外の時は、CTを撮ったりその他の検査をしてみてもなんら脳の障害を示すような所見は得られません。また、一見症状は重篤にみえますが、命にかかわることはありません。詳しくは、当院のHPで他のQ&Aの実例を参考にして下さい。

 

 

  

 


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