<<< Q & A・No.177 >>>

 

 

 

 

 もうすぐ、14歳で雑種、18キロの犬です。血尿で前立腺肥大(3×5)が見つかり、手術を勧められました。とても小心で、検査の後は食事もしないくらいショックで、2日ほど落ち込んでました(尻尾がたれて)。今は、抗生剤で血尿はないようです。こんなに小心で高齢の犬でも手術した方がいいのでしょうか?ちなみに、一泊で7〜8万円と言われました。よろしくお願いします。

 

 

  

   

 

 

 

 

○○様

 犬で前立腺の肥大を起こす最も一般的な疾患は前立腺過形成ですが、この病気では前立腺分泌物の流量が減少することで尿道からの上行性の細菌感染を起こしやすくなっており、そのためほとんどの症例で感染性前立腺炎を併発しています。今回のケースも抗生物質による治療が行われていることからみて、おそらくそういった病態ではないかと思われます。

 したがって、抗生物質の服用により血尿など一部の臨床症状が消失したとしても、それは併発した前立腺炎が治癒したためであり、その治療自体は前立腺過形成には何の効果もないので、そちらが治ったわけではありません。なお、老齢犬に多くみられるこの病気は、雄性ホルモンであるアンドロゲンの分泌過多や、雌性ホルモンのエストロゲンとのアンバランスが原因で起こるとされており、そのため治療法としては外科的に精巣を摘出する去勢手術や、雄性ホルモンの働きに拮抗するアンチアンドロゲン製剤を用いた内科的治療が一般的です。

 ただし、犬の前立腺過形成は、人の場合のように尿道周囲の内腺と呼ばれる組織が増殖するタイプと違い、その外側の外腺と呼ばれる組織が増殖するタイプであるため、排便障害や疼痛などの臨床症状も人に比べると軽く、尿道閉塞も起こりにくいとは言われています。そのため、前立腺炎は併発していないかあるいは治療により治癒しており、前立腺肥大による臨床症状もみられないようなケースについては普通、とくに過形成に対する治療は必要ないと言えます。とはいえ、しばしば尿道炎や膀胱炎などの尿路感染を起こしているような老齢犬に前立腺過形成がある場合には、前立腺炎の再発を繰返すような事態に陥りやすく、その結果、慢性前立腺炎から前立腺膿瘍へと移行し、最悪それが破裂して腹膜炎を起こすなどというリスクも皆無ではありません。

 そこでそういったケースにかぎっては、前立腺過形成に対する根本治療は、前立腺炎の再発と慢性化を防止するという意味からも重要な選択肢になろうかと思います。その場合、どのようなライフステージで実施したとしても、確実に前立腺を縮小させる効果が期待できる去勢手術が、獣医療においては治療の第1選択肢(人の場合には、理由はどうであれこの選択肢はありません)となるわけですが、当然、肝機能や腎機能、呼吸器系や循環器系などに問題がなく麻酔などの手術にともなうリスクが最小であることが条件となります。

 ただし、どうしても手術にともなうリスクを回避できなかったり、高齢や犬の性格を考えると手術はどうもということであれば、アンチアンドロゲン製剤を用いた内科的治療を選択するということになります。その際、人で用いられていた従来のプロゲステロン製剤の中にはエストロゲン作用を持つものがあり、犬に使うとかえって前立腺過形成を助長するという不都合な結果を招くことがあるという問題がありましたが、現在では犬の前立腺肥大治療用として優れたアンチアンドロゲン製剤が開発されていますので、主治医の先生に一度相談されてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 


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