<<< Q & A・No.176 >>>

 

 

 

 

 犬のこう門嚢にたまる分ぴつ液を絞るのは、専門の方にしていただいたほうが、よろしいでしょうか?それとも、飼い主がしてもいいんでしょうか?

 

 

  

   

 

 

 

 

○○様

 肛門嚢(俗にいう匂い袋)の分泌物に対する誤解があるといけないので始めにご説明しておきますが、健康な犬や猫であればあえてこれを絞る必要などありません(野生の状態では絞ってくれる相手などいません)。というのも、通常は彼らが排便する際に肛門を取り巻く外肛門括約筋が収縮すると、それによって肛門嚢内の分泌物が自然に絞り出され、便の表面に付着する仕組みになっているからです。本来、肛門嚢の分泌物には個体毎に固有の匂いがあって個体識別に役立っていますが、上記のような仕組みは、そのためのいわゆる匂い付けという目的にかなったものであるわけです。

 なお、1)便がゆるくなりやすい高脂肪食など、普段から不適切な食餌を摂取していたり、外肛門括約筋の機能不全などがあって肛門の収縮運動が不十分である。2)肛門嚢内の分泌物を排出するための管の径がもともと細すぎて、部分的な閉塞を起こしやすい。3)ほかに脂漏症などの原疾患があって肛門嚢が分泌過多の状態になっている。4)何らかの原因で肛門嚢内の分泌物の性状が変化し、流動性が低下して排出しにくくなっている。等々が存在すると、肛門嚢内の分泌物の滞留が起こることになります。始終肛門を舐めていたり、肛門付近を床にこすりつけたり、尻尾の方を気にしてくるくる回る動作などが頻繁にみられるようだと要注意です。これは正式には「肛門嚢の埋伏」と呼ばれる立派な?病気であり、この状態になると定期的に絞ってやらないと多くは自然排出は望めません。

 ただし、それをどういうかたちでやるのかは、埋伏の程度によって判断することになります。例えば、自然排出はしないまでも絞ってやれば普通に排出できるような状態の場合は、獣医師の指導を受け自宅治療ということで2〜4週毎に飼い主がそれをしてやればいいでしょう。しかし埋伏が重度になると普通に絞った程度では排出は困難で、こうなると肛門嚢内に薬液を注入するなどの獣医師による治療が必要になります。さらには、細菌感染によって「肛門嚢炎」という感染炎症を引き起こしていたり、それが原因で中に膿が充満し、それが破裂して直腸内や肛門周囲の皮膚から漏れ出ることのある「肛門嚢膿瘍」まで進行しているような場合は、さらに専門的な治療が必要になります。

 ご理解いただけたと思いますが、今一度繰返すと、健康な犬や猫では、肛門嚢内の分泌物を絞る必要はありません。これに対し、何らかの原因で肛門嚢内の分泌物が滞留するようになってしまった、「肛門嚢の埋伏」という病気の犬や猫の場合は、治療の一環としてそれを絞ってやる必要があります。それが軽症であれば自宅治療ということで飼い主が絞ってやってもいいですが、重症になると獣医師による治療が必要になります。ということで、肛門嚢がつまるのは病気なんだということをくれぐれもお忘れにならないよう。

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 


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