<<< Q & A・No.175 >>>

 

 

 

 

 はじめまして。

 5歳の雌猫のことでご相談したいことがあります。

 11月末頃から食欲がなくなりました。病院で尿検査異常なく、精神的なものだろうということで、点滴をしてもらいました。

 1週間たっても食欲が出ないので、血液検査もしてもらいましたが異常がありませんでした。食べない日が続くので再び点滴をしてもらいました。その後、徐々に食欲が出てきて、12月10日頃には食欲は元の通りになり、元気も出てきました。

 12月20日頃から、また食べなくなりました。この時は前回と違い欲しそうにするのですが、匂いを嗅ぐだけでした。21日朝、軟便気味でした。フードは食べませんでした。夜、新しいフードを与えてみると少しだけ食べました。その後、すぐ吐きましたので、病院に連れて行きました。

 レントゲン検査等は異常なしでした。毛球症かも知れないということでラキサトーンを貰いました。夜、遅かったのでラキサトーンは与えませんでした。22日朝、起きると毛玉を吐いてました。ラキサトーンはその後、7cmくらい与えました。22日は何度も吐き、下痢も5、6回しました。

 23日朝、ラキサトーンを与え、再び病院へいきました。前日の症状を話すと「ラキサトーンはもう与えないで下さい」との事でした。あとは膵炎の疑いがあるとのことで、特別な血液検査と点滴をしてもらいました。

 24日以降は徐々に食べ、元気もありました。下痢・嘔吐もありません。28日には元通りの食欲になり、年末・年始も走ったり跳んだりと元気でした。

 今日、病院から電話があり血液検査の結果、「数値が少し高めで慢性膵炎だろう」という事でした。呆然と電話を聞いていたら、「また悪くなったら連れて来て下さい」との事でした。ショックで質問も出来ませんでした。このまま悪い症状が出るまでほっておいて大丈夫なのでしょうか?

 長々とすみません、よろしくお願いいたします。

 

 

  

   

 

 

 

 

○○様

 猫の膵炎の場合、その原因のひとつとして、トキソプラズマ症や猫伝染性腹膜炎(FIP)などの感染症や胆管肝炎が関与していることが知られていますが、そのほとんどは病因がはっきりしていません。したがって、効果的な原因治療ができるトキソプラズマ症によるものなど一部を除けば、基本的に膵炎の治療というのは対症療法に頼らざるを得ないわけです。

 すなわち、嘔吐、元気消失、食欲不振、腹部痛などの諸症状に対し、循環血液量の確保、膵液の分泌抑制、痛みの緩和、合併症の抑制などを目標とした薬剤による内科的治療(輸液、制吐薬、鎮痛薬、抗生物質などの投与)が主として行われます。もっとも、それはもっぱら個々の徴候が比較的強く現われる急性膵炎の場合であって、それに比べるとおよそ特徴的な症状に乏しいばかりでなく、症状らしい症状がほとんど見られないこともある慢性膵炎の場合には、そのような治療の対象外ということもあります。

 それというのも、一般に猫の慢性膵炎においては、膵臓には病理学的にみて明らかに炎症性病変があるものの、ほとんど臨床症状をともなわないケース(ほかの原因で死亡した猫を解剖したところ、慢性膵炎の病変が見つかったなどということもある)が多数みられ、それが何かのきっかけで活動性慢性膵炎に移行すると症状が現われてきます。上記のような対症治療は、あくまでも症状を抑えるための治療ですから、この時に行われるのでなければ意味がないわけです。

 とはいえ、活動性慢性膵炎を繰り返すようなことにでもなれば、膵臓の組織の破壊が徐々に進行し、いずれは膵臓における酵素やホルモンの分泌機能を喪失するような重大な事態を招きかねません。そこで症状が現われていなくても予防措置として、脂肪を制限した食餌(専用の療法食を病院で処方してもらえます)を生涯にわたって与え続けるなどの食餌管理が必要かと思います(脂肪の大量摂取はをそれを消化するための膵液の分泌亢進を招き、その結果、自己消化によって膵臓の障害が進行し慢性膵炎が活性化するため)。

 また、膵炎にともなう膵液中の消化酵素の減少が脂肪の消化吸収を妨げ、その結果、脂肪便による浸透圧性下痢がしばしば見られようであれば、食餌中に膵臓酵素剤の添加が必要な場合もあります。今回、一応慢性膵炎との診断が下されているのであれば、そのような今後の措置について、一度主治医に相談されてみては如何ですか。

 

 

 

   

 

 

 

 

 こんにちは。お忙しい中、ご回答ありがとうございます。

 慢性膵炎というのは症状らしい症状があらわれない場合もあるんですね。仰向けに寝ているとか、元気があるとか、食欲があるとかで、暢気に喜んでいられないのですね。。。。爆弾を抱えているみたいで気が休まらなく、可愛く元気に遊んでいる猫を見るたびに泣けてきます。なんで、こんな病気にさせてしまったのか、私に飼われたたばっかりに・・・と猫に申し訳ない気持ちです。

 うちの猫は4.3kgで太ってはいませんし、脂肪の多い食事も与えていないつもりです。ドライフード(アズミラやサナベレ)の上にフリーズドライのササミ(時々、カツオになることもあります)をふりかけるくらいで、他のものは与えていません。

 嘔吐と下痢は今回、初めてで、毛球症の薬を飲ませていた時だけ集中していました。特別な膵炎の検査で、少し数値が高いと言う事は、慢性膵炎・・になるのですね。初めてこのような事になったのに、なんで急性ではなく、慢性なんだろうと思いました。 慢性の方が重篤なんですよね?

 また、慢性膵炎を信じたくない気持ちが強いばかりに、毛球症の薬を飲んでから下痢・嘔吐が続いたので、そのせいで一時的に膵臓の数値が悪かったのかも???などと、甘い、甘ぁーい気持ちがありました。どうか笑わないで下さいね。医学に無知な素人なもので・・・。療法食は主治医に尋ねてみます。

 ご親切、ご丁寧なご回答、心から感謝いたしております。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

○○様

 当初は毛球症の疑いがあってラキサトーンを舐めさせていたようですが、その主要成分はミネラルオイルですから多めに摂取すると軟便や下痢になりますし、空腹時ですと嘔吐する場合もあります。本来、毛球症のほか便秘症にも使われるものですから、当然と言えば当然です。今回、ラキサトーンの使用と下痢の症状が一致して見られたのであれば、その影響が大きいのではないでしょうか。普段から油の腐ったような悪臭のする下痢が続いたりしていたのでなければ、膵炎による症状とは考えない方がいいように思いますが。

 なお、今回のご相談では、かかりつけの病院での診断が慢性膵炎ということでしたので、一応そういう前提でアドバイスさせていただきましたが、特別な膵炎の検査で少し数値が高かった(多分血中アミラーゼの検査だと思いますが)以外に、ほかにこれといった異常所見が全く見られないということであれば、実際のところそれで慢性膵炎と断定するのは難しいのではないでしょうかね。もともとこれといった診断の決め手を欠く病気ではあるんですが。

 少し酷な言い方かもしれませんが、飼い犬や飼い猫がちょっと元気がないように見えると、何か大変な病気じゃないんだろうか、自分の対応が悪かったんではないだろうかとやたら深刻に思い悩み、悪い方悪い方へと自分を追いつめてしまうタイプの方には、我々の側としては、病気じゃありませんよと言いきるのはそう簡単ではないってところが結構あるんですよね。それだとなぜか逆に納得しない方が多いんです。

 そんな時、慢性膵炎というのは、言葉は悪いですがある意味都合の良い病気なんですよ。まぎれもなく膵炎という立派な病気ですが、病気なのか病気じゃないのかはっきりしない曖昧な症状もさることながら、一部を除けばいますぐにどうこうといった切羽詰まった病気でもなく(急性膵炎の方が切迫していてより重篤な病気です)、普段から少しばかり食餌に気を遣うだけで、放っておいても活動性に移行しなければ何も発症しないというわけですから。

 もっとも、あなたの場合は、それがまたかえって心配の種になってしまうときてはどうにも困りましたねえ。できれば、当院のQ&A実例集のNo.143を読んでみて下さい。あなたと同じようなタイプの方の事例が載っていますので、少しは参考になると思います。

 

 

 

 

 

 

 お仕事の後、お疲れになっているところ、ご丁寧で判りやすい説明、本当にありがとうございます。

 下痢はしたことがありません。食欲不振の時は1、2回通常よりも軟便になりました。毛球症のお薬をやめたら、通常の良い便が出ています。

 Q&A実例集のNo.143の方は、まるで自分のようでした。先生は動物だけじゃなくて人間も見られるのですね。あまりにピッタリと指摘されて、”酷な言い方”と感じるよりも、むしろ痛快な感じです。

 お食事に気をつけていきたいと思います。

 本当にありがとうございました。

 

 

 


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